じっと待つこと笑顔のチカラ
「文明は、便利、安楽、スピードをもたらした反面、待つこと、耐えること、静かに考えることを奪っていった」。
これは、8/21「置かれた場所で咲きなさい」の著者で2016年に召された渡辺和子氏の言葉。
ゴドーを待ちながら
確かに、便利、安楽、スピードのベルトコンベアに乗っている限り、出てくる笑顔もオートマティカル。待つこと、耐えること、静かに考えることから出てくる喜怒哀楽は、人の心の深みに染み込んでいく。
学生時代、傾倒していたサミュエル・ベケットの作品に「ゴドーを待ちながら」というのがあ
る。2人の浮浪者がゴドーという人物を待ち続けるのだが一向に来ないまま、芝居が進む。
ドラマらしいドラマも起こらず、ただただ待ち続け、待つことに期待が込められていく。
当時の作品雑感に、もはや「待つことと、耐えること以外に何一つ演劇的なことは残されていない」などと生意気なメモが残っている。しかし、ここまで世の中がおかしくなってくると、あながち生意気だけとは限らないかもしれない。
脳にシワができていくように、待つこと、耐えること、静かに考えることを通して、こころに深みができていく。失敗を通して、人は磨かれていく。
渡辺さんの言葉を引用するとー
「人はチャームポイントのただの笑顔から、他人を思いやる笑顔、さらに自分の心との戦いを、笑顔へと転換することで成長する」。
この成長が人の心を動かす笑顔を生み出していく。しかもその笑顔によって、「抱えていた問題が解決したり、自分自身との戦いの末に身についた微笑みは、他人の心をいやす力がある。
なぜならば、どちらも苦しみという土壌に咲いたほほえみだから。
これに比べて、不機嫌はそれこそ環境破壊。人の心をむしばみ、汚すダイオキシン。笑顔こそ、立派なエコ」という。
じっと待つこと、笑顔のチカラ、笑顔のエコで夜も寝られないほど待っていたゴドーが現れるかもしれない。