サービスとおもてなし
サービスとおもてなしの違い、わかりますか。
こうしたテーマを3ヶ月十数コマかけてきたのが、私が某専門学校で教えてきた「おもてなし学」という講義です。
なので時間をかけずに、この一回だけでギュッとひとことで言えばー
「お客様にとって便利な状況を構築していく」のがサービス。
「緊張感を適宜醸し出しながら、そこに満足感、充足感、穏やかさ、哀愁、つつましさ、しなやかさ、たたずまい、想像力、ひらめき、インスピレーションを調和させていく」のがおもてなし。
サービスはあらゆる不足に対応していけるように「ひたすら足し算、掛け算」、
おもてなしは「ひたすら引き算、割り算」というのが、私が実践してきたおもてなしの最前線。
わびさびの世界
日本を日本人以上に理解している欧米人もけっこういるが、彼らにとってどうしても乗り越えられない壁がある。「わびさびの世界」。
これも大胆に一言で言えば、「必要なもの以外を一切削ぎ落としていく世界観」。
そこはかとなく漂う「無駄のない一挙手一投足」。こう話すと決まって縁がなさそうな顔をする学生たちも、「散る桜に美しさを感じる?」と聞くと、間違いなく「はい」と答える。この滅びの美学がわびさびに通じる世界。
欧米人は、散るものに美を感じる感性はおろか、執着しない。彼らにとって、死は死でしかない感性と、死んだ人になおも死化粧する日本人の死生観との違いであろう。
「必要なもの以外を一切削ぎ落としていく世界観」、そこにこそ「わびさびの魂」があるとする感性。これが「ひたすら引き算、割り算」というおもてなしワールドにつながる。
ここから引き出される答えは、言語を超えてあなたの五感を、新感覚で研ぎ澄ましていく。
ところで、真っ暗闇で食べる人気のレストランが世界中で話題になっている。
その元祖は、1999年にスイスのチューリッヒにオープンしたステファン・ザッパさん経営の「プリンデ・クー」(盲目の牛)。
暗闇の中で、五感が研ぎ澄まされると、会話もナチュラルになる。
同時に、五感が研ぎ澄まされるので食事も美味しく頂ける。
暗闇の中で、五感が研ぎ澄まされると、会話もナチュラルになる。見えると相手の言葉に、つい口を挟んでしまう。
自らを主張するのではなく、自らの気配を消すことで、今まで見えなかったもの、聞こてこなかった感覚が研ぎ澄まされていく。
たとえ、わびさびの世界が理解できなくても、人間が本来求めているものはどこにあるのかが見えてくる。