悲観的な未来
人間は、理性的に先の展開を予想すればするほど未来に対してネガティブになる。それだけ人間は悲観的な未来を想像して準備する力が高いため、自ずと現在をネガティブに捉えてしまう傾向がある。
こうした傾向は思春期からすでに見られ、知覚の鋭い成績優秀者は、物事を悲観的に捉える傾向が強い。
だからこそ、勤勉になり、結果を出すことが全てだと考える。あるいは、思い余って自殺をしてしまう個体もある。
心理学者フィリップ・ジンバルドーは、自分がひどく悲観的な未来志向型であり、現在を楽しむことができていないことに気づいた。
それで友人に意識も何もかも未来ではなく現在に向けることを意図した催眠法を試した。
すると現在がとても新鮮に見え、絵画の色使いや匂いにまで敏感になったという実験結果を発表した。ーとここまではいい。
ところが最近、これが全てヤラセであることを発表し、悪名を轟かせたというのだ。
スタンフォード大の名誉教授といえども、人間は、それほど不安に苛まれ、苛まれるあまり疲れ果てていく。
これは、中野信子著「空気を読む脳」からの抜粋である。
あまりに敏感すぎると、未来を予想する力が強く、悲観的になってかえって行きづらくなる。
そうなると、「適度に鈍感で忘れっぽく、愚か」ー、こちらの方がずっと生きやすいかもしれない。